言語習得に関する基礎研究と英語教育への応用
言語習得研究機構は、人間が母語や第二言語を身につけるメカニズムを理論的に解明し、人間の認知能力への理解を深めることを目指しています。 私たちは主に「第二言語習得」を研究対象としており、日本語を母語とする英語学習者(Japanese Learners of English: JLEs)などから観測した実際の発話データに基づき、その習得プロセスの理論化に取り組んでいます。 また、こうした基礎研究によって得られた知見を、単なる理論に留めることなく、学校現場における英語教育の実践へと還元していくことにも注力しています。
文法項目間の習得順序
第二言語習得の研究では、すでに母語を獲得し、基本的な認知能力を備えた学習者を対象とするため、文法項目に着目して習得過程を観察できます。 学習者がそれぞれの文法項目を身につけていく順序(文法習得順序)には一定の傾向があることが知られており、この順序を解明するためには、項目ごとの「学習難易度」の検証が必要です。 先行研究では、日本語を母語とする英語学習者(JLEs)にとって、冠詞や名詞の複数形などの習得が特に困難であり、冠詞の脱落や複数形の語尾(-s)の付け忘れといった誤りが生じやすいことが示されています。 本機構では、こうした学習難易度について、十分な量のデータ収集と分析に基づいた体系的な整理に取り組んでいます。
文法項目ごとの習得過程(発達段階)
学習者は特定の文法項目をある日突然習得するのではなく、誤りを繰り返しながら、段階的に習得へと至ります。この一連の過程は「発達段階」と呼ばれ、ここにも一定の法則性が存在します。 本機構では現在、特に「英語の人称代名詞(I, you, he, she など)」に着目した研究を進めています。日本語では主語や目的語が省略されることが多く、人称代名詞の使用頻度が極めて低いという特徴があります。このような言語間の差異を背景に、JLEsが英語の人称代名詞を身につける際に経験する発達段階を推定するとともに、その理論的背景を明らかにすることを目指しています。
学校英語教育におけるICT・人工知能の活用
近年、ICT(情報通信技術)や人工知能を活用した、より効果的な英語教育の実現が期待されています。しかし、既存の検討の多くは特定のツールによる学習効果の測定に留まっており、本格的な指導法やカリキュラムの構築には、その効果が生じる「メカニズム」の解明が欠かせません。 そこで本機構では、ICT活用が学習者に与える影響を、これまでの第二言語習得研究の知見と照らし合わせ、理論的に解釈・分析しています。一連のメカニズムの解明を通して、新たな指導法や教育カリキュラムの提言へと繋げていきます。
論文・学会発表
本機構は、研究活動を通じて得られた知見を論文や学会発表にて積極的に公表しています。対外的な議論を通じて研究の質を向上させるとともに、学術領域全体の活性化と発展に寄与することを目指します。最新の活動実績については、本ウェブサイトにて随時報告いたします。
他の研究組織や学校との連携
本機構は、大学などの研究機関に加え、教育の実践の場である学校現場との積極的な連携を図っています。多様な立場から言語習得に携わる方々との交流を深め、研究活動をより開かれたものにするとともに、社会に資する研究の在り方を追求してまいります。